温室効果ガス削減の目標の達成

国連環境計画が昨年10月に公表した報告書によれば、各国の温室効果ガスの削減目標が達成できたとしても、気温上昇は2.4~2.6℃に達し、1.5℃目標には遠く及ばないことが分かっています。報告書は、更新・強化された目標を積み上げても、7年後の2030年に新たに削減できるのは、排出量の1%に満たない5億tにとどまるとしています。1.5℃目標達成には、2030年までに45%削減する必要があるとの見通しを示しています。
ロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー危機が続く中、排出量の増加が続く新興国に削減目標の引き上げを求めるG7と、応じようとしない新興国側の溝も深まっています。昨年6月のG7首脳会議は、最大排出国の中国、3位のインドを含む新興国を念頭に、1.5℃目標に見合わない国別削減目標の引き上げを強く求める首脳宣言を採択しました。インドネシアが議長国となった主要20か国・地域(G20)首脳会議でも、対ロシアで足並みがそろわず、気候変動問題は脇に追いやられています。インドは、経済成長のためエネルギー安全保障を重視する姿勢を改めて示しています。
権威主義的な中露と、日米とEUを中心とした民主主義陣営の分断が深刻化しています。気候変動の分野でも、2つの世界秩序の間にある新興国、特にインドや東南アジア諸国連合(ASEAN)への働きかけが重要になっています。わが国は、これまでアジア諸国と積み重ねてきた協力を土台に、アジアの脱炭素化で主導的役割を果たしていく必要があります。

(2023年2月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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