日本の財政の悪化

2013年1月に政府と日銀は共同声明を結び、日銀は2%のインフレ目標に向けて金融緩和に取り組み、政府は成長戦略を実現し財政健全化を進めることにしました。それから10年が経過し、市場機能の低下という副作用を生むほど、日銀は金融緩和に突き進みました。政府は、金融緩和が生み出した恩恵に甘え、財政の規律は緩んでしまいました。日銀が大量の国債を市場で買い、政府が簡単に借金を重ねられる状況は、事実上の財政ファイナンスです。
2012年末に691兆円だった普通国債の残高は、10年間で4割以上増え、1,000兆円を超えてしまいました。GDPに対する政府債務の比率は主要国で突出しています。財政の大盤振る舞いは、経済を強くするどころか、逆に衰えを招いています。帝国データバンクによれば、実質破綻状態で事業を続けるゾンビ企業は、2021年度に18万8,000社にも達しています。
ゼロゼロ融資が拍車をかけ、ゾンビ企業は全体の12.9%に達する一方、廃業率は先進国平均の半分以下の3%どまりです。産業の新陳代謝が進まず、変革は生まれません。デジタル投資はこの10年は微増にとどまり、3~5割伸びた米欧に劣後しています。潜在成長率は0.3~0.5%に低迷したままです。

(2023年2月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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