ALSに対する遺伝子治療の開始

全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)に対し、国内初となる遺伝子治療の臨床試験が始まります。自治医大病院で40~78歳の患者6人を対象とし、安全性と有効性を確かめます。人口10万人あたり2人ほどが罹るとされ、患者全体の9割ほどは孤発性ALSとされ、家族にも患者がいる家族性ALSは1割ほどとされています。
遺伝子治療は、体内に特定の遺伝子を導入することで、病気の治療や予防を目指します。病気の原因となる遺伝子が本来果たすはずの機能を、外から入れた遺伝子によって持続的に補うことができます。海外で、家族性ALSで遺伝子治療の治験が行われたことはありますが、孤発性ALSでは、世界でも初めてです。
ALS患者で機能が損なわれるとされるADAR2遺伝子に注目しました。この遺伝子を含む治療薬を投与し、神経細胞で働かせることで、症状の進行抑制を目指します。細胞に遺伝子を導入する運び役には、遺伝子治療でよく使われ安全性の高いアデノ随伴ウイルスを使います。ADAR2の働きが損なわれると、神経細胞にとって重要なイオン濃度を調節する仕組みに不具合が生じ、特定のたんぱく質が過剰に活性化して、神経細胞の死につながると考えられています。

(2023年6月3日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。