BCGの必要性

 結核は戦後しばらく死因第1位でしたが、治療薬とBCGの普及で劇的に減少しました。BCGは毒性を弱めて発病しないようにした結核菌を使用したワクチンです。接種すると免疫細胞のマクロファージに感染します。体はこのマクロファージを結核菌ごと殺すT細胞を作り出して菌を排除します。T細胞は1015年体内に残り、次の感染に備えます。日本脳炎などのワクチンは、接種すると血中に抗体を作ります。抗体は体内に侵入したウィルスを捉え、感染を阻止します。一方、BCGでできるT細胞は、結核菌の感染自体を防ぐことはできません。菌の増殖を抑え、発病や重症化を防ぐことになります。日本では0歳児全員に接種が推奨されています。
 現在、新たに見つかる結核患者は年間2万人です。014歳の小児患者はここ10年で半減し、2014年は49人しか発症していません。10万人あたりの患者数が1桁になれば、BCGの接種を止めることを検討する対象になります。欧米にはすでに1桁になっている国が多く、全員接種を取りやめる国が増えてきています。BCGをしないというのが、先進国の基本的な考えです。BCGをやめれば、結核菌に感染していない状態が普通になります。発症が疑われたら、かつて学校で打たれていたツベルクリン注射で簡単に診断できます。簡単に診断がつけばすぐに治療でき、感染を広げない対策もしやすいことになります。

(2016年3月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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