公立学校若手教員の支援策

休職・離職状況などに関する文部科学省の調査によれば、採用から1年未満で辞める新任教諭も増えています。2022年度は前年度比98人増の635人で、うち精神疾患を理由に辞めたのは229人にも達しています。2009年度以降で最多となっています。採用されたばかりの教員が、学級担任など負荷の重い業務を任されることも多くなっています。近年はベテラン層の定年による大量退職が続き、それに伴う大量採用で若手が増加し、支援が不十分との指摘もされてきています。
各地の教育委員会や文部科学省が、公立学校の若手教員の支援策を次々に打ち出しています。公立学校の若手教員をめぐっては、その負担の重さが指摘されてきました。文部科学省が2022年度に実施した教員の勤務実態調査によれば、平日の労働時間(在校等時間)が最も長かったのは男女とも30歳以下でした。
柱の一つは、若手教員のサポートをする新たな職を設けることにしています。現場で行われてきた若手支援を職務として明確化し、給与も新職は一般の教諭より高くすることを検討しています。また、新任教員に学級担任を持たせないなど各教育委員会の取り組みを財政面で支援する考えです。このほか、小学校の5、6年生で導入されている教科担任制を、3、4年生へ広げることも検討しています。

(2024年5月11日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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ギャブンル依存症の増加

ギャンブル依存症問題を考える会の発表によれば、患者の家族から寄せられた相談は479件に増加しています。このうち約2割に当たる97件がネットカジノに関するもので、コロナ禍前の2019年の8件の12倍になっています。深刻なのが低年齢化です。全相談の8割弱が20、30代の家族からです。10代の子どもが関わるスポーツ賭博の相談も寄せられています。スポーツ賭博が蔓延している高校もあります。高校生のためにアカウントを売買する業者まで現れています。

 (2024年5月6日 中日新聞)

コロナ禍でオンラインの公営ギャンブルにはまる人が増え、そこでできた借金を取り返そうと、オンラインカジノへ移行しています。今やスマホ一つで違法なギャンブルができる時代になっています。海外で合法的に運営されているネットカジノでも、国内から接続して賭けるのは違法です。違法性をうたわずに運営しているサイトがあり、違法と認識せずに利用する人がいます。依存症の行き着く先は自死や犯罪です。病気という認識を持つことが大切です。
依存症状態になると負け続けてもギャンブルをやめられなくなります。いったん依存症になると立ち直るのは困難です。医学的な介入方法として、自分の状態を理解、認知してもらう心理療法がありますが、借金の整理なども必要となります。家族が安易に借金を肩代わりすることは止めるべきです。

 

(2024年5月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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コロナで分かった医療体制の脆弱性

コロナ禍以前は、世界に冠たる日本の医療と自画自賛していた医療体制でありましたが、有事において驚くべき脆さを露呈してしまいました。全国の病院一般病床と感染症病床は約90万床ありますが、第5波のピーク時でさえ、確保できたコロナ病床は3万7,723床(4.2%)、うち重症者用は5,530床(0.6%)に過ぎませんでした。
ハード面とソフト面の2つの要因があります。ハード面として、第1に挙げるべきは、医療機関の規模が小さすぎることです。診療所はコロナ患者受け入れが物理的に不可能であり、ここに全国約30万人の医師のうち10万人ほどがいました。病院についても、感染エリアのゾーニングが難しい200床未満の中小病院が約7割を占めています。受け入れ先として十分な規模の400床以上の大病院は、1割に満たない状況です。
第2に病院の8割以上が行政命令の及ばない民間病院です。民間病院でも、他の先進国のように患者受け入れ命令が出せれば良いのですが、日本では要請するのがせいぜいです。第3に医療機関の機能分化、役割分担が不十分で、中小病院にも急性期病床が多いなど、医療資源が過度に分散されています。このため大病院ですら、専門スタッフやICUなどの医療設備が不足する事態となりました。
ソフト面としては、第1に大病院と周辺の中小病院の間に普段から良好な連携・協力関係が築かれておらず、スムーズな転院調整ができませんでした。他の先進国では、大病院にコロナ患者、特に重症者を集中させ、中小病院が大病院の一般患者や軽快化したコロナ患者を引き受け、大病院のコロナ病床の回転率を高めていました。第2に行政のガバナンス(統治)にも大きな欠陥がありました。医療法や感染症法には、感染対策や病床確保は都道府県が担うと規定されており、厚生労働省は、コロナ禍の有事にも平時と同じように都道府県に丸投げしていました。裁量権も主体性も乏しい都道府県が、遠い現場を指揮する無理な体制となってしまいました。
現在もハード・ソフト面ともに課題山積の状況です。都道府県が医療機関に補助金を支払って協定を結び、契約で病床を確保することになりました。また病床調整を機能させる地域ネットワークとして、都道府県に連絡協議会の設置を義務づけていますが、国が上から指示すれば直ちにネットワークができるとわけではありません。次の感染症拡大に対する抜本的改革の方針を得るには、しがらみのない超法規的機関が担当する必要があります。

(2024年5月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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第65回日本卵子学会学術集会 開催 @神戸

第65回日本卵子学会学術集会が、英ウィメンズクリニック理事長である塩谷雅英先生を会長の下、神戸国際会議場で開催されます。今回のテーマは、「生命誕生の神秘に向き合う-基礎と臨床-」です。

 

本学会は、生物学、農学、獣医学などアニマルサイエンスの研究者、生殖医療を実践する医師や胚培養士の方々が一堂に会し、基礎と臨床の連携の場を提供する極めてユニークな学際的な学会です。

 

(吉村 やすのり)

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マイナンバーカードの利用効率の低迷

会計検査院の調査によれば、全国の自治体における約4割の事務手続きで、マイナンバーによる情報照会が活用されていませんでした。社会保障や税、災害分野などの1,258の手続きの約4割で、事務処理時のマイナンバー情報照会がゼロでした。照会している自治体が全体の1割未満にとどまる手続きが9割を占めています。
活用が低調な理由としては、システムを使うための環境整備ができていない、住民から添付書類を出してもらった方が効率的、システムに市民の最新情報が反映されておらず使えないが挙げられています。その結果、住民には、本来なくなるはずだった負担が生じ続けています。例えば、退職などに伴う国民健康保険に関する手続きでは、約220万人がシステムを使わず、紙の証明書の提出を求められています。

 

マイナンバーカードは、公平な税負担や社会保障につなげるため、政府が国民の所得や資産を正確に把握しやすくする狙いで導入されましたが、個人情報の集約に懸念の声もありました。行政での活用が進まなければ、国民の利便性の向上につながらず、マイナンバー施策推進の目的や意義について理解を得るのは難しくなります。

(2024年5月16日 日本経済新聞 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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