iPS細胞による創薬研究

iPS細胞と既存薬の転用を組み合わせた治療薬の開発が加速しています。京都大学などの研究チームは、全身の筋肉が次第に衰える難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の根治を目指す臨床試験を近く始めます。慶應義塾大学でも同様の治験が進んでいます。iPS細胞で病気の原因を解明して新薬を開発するiPS創薬への期待は大きいものがあります。創薬では、一般に、病態を解明して病気に関する物質を抑える化合物を探索します。その効果や安全性を細胞や動物を使った実験で確かめる必要があります。1つの新薬を生み出すには、1,000億円以上の費用と10年以上の期間がかかり、新薬開発の成功確率は3万分の1ともいわれています。
iPS細胞は実際の患者の細胞で多くの実験ができるため、患者から取り出して実験しにくい脳や神経といった患部の病気の原因究明などに役立ちます。患者の皮膚からiPS細胞を作製し、病気を再現するような細胞に変化させ、その細胞を使用し、薬の効果を判定します。多くの既存薬の効果をみることができるため、安全性を確認できており、大幅に創薬の効率が高まります。特に患者が少ない難病など珍しい病気で有効です。企業の利益が見込めないことから、これまで珍しい病気の創薬開発は進んできませんでした。

(2019年4月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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