iPS細胞の備蓄

 京都大学iPS細胞研究所は、ヒトへの移植治療に使うiPS細胞を備蓄するiPS細胞ストックの構築を進めています。京都大学は、日本赤十字社の協力でボランティアの血液からiPS細胞を作製しました。日本人で最多の免疫型を持ち、免疫拒絶の少なく人口の約17%に移植できるというものです。京都大学では2014年から品質評価を進めてきました。今後は細胞医薬培養施設でiPS細胞を増やし、凍結保存します。このiPS細胞を用いて2017年までに理化学研究所が、目の難病である加齢黄斑変性症の治療を行う予定です。さらに神経難病のパーキンソン病や、目の難病の網膜色素変性症、脊椎損傷の治験にも細胞を提供することにしています。
 理化学研究所は2014年秋、患者自身から作ったiPS細胞を使う自家移植で世界初の臨床研究を実施しました。しかし、治療期間が長く、治療費がかさむため、他人由来のiPS細胞を備蓄するストックの活用が求められたといった経緯がありました。京都大学が備蓄細胞の提供を始めたことにより、再生医療ビジネスへの企業の参入が加速しそうです。京都大学は今後も様々な免疫型のiPS細胞のストックを作る計画です。2017年までに5~10タイプをそろえて日本人の3~5割をカバーする予定です。2022年までに日本人の8~9割に対応するため、75~150タイプの細胞を備蓄する方針としています。

(2016年6月20日 日本経済新聞
(吉村 やすのり)

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