mRNA関連の特許出願の状況

mRNAは、細胞の核の中にあるDNAから遺伝情報をコピーし、設計図通りのたんぱく質を作らせる物質です。1960年代に発見され、2000年頃から医薬品としての開発が本格化しています。
データ解析企業であるアスタミューゼによる2001年以降のmRNA関連技術の特許出願状況の分析によれば、世界で出願された1万864件の特許のうち、国別首位は米国で、5,167件と全体の48%を占めています。ドイツの1,317件、中国やスイスの858件と続いています。日本は838件で5位でした。開発の中心になるのは米国とドイツです。米国は企業だけでなく政府組織の出願特許も多く、米保健福祉省や米国立衛生研究所などがそうです。

mRNAを使った医薬品が実用化されたのは、今回のコロナワクチンが世界で初めてです。コロナワクチンでの成功が弾みとなり、今後は幅広い領域でmRNA技術の応用が見込まれます。製薬企業や研究機関は、がんや心疾患、希少疾患向けの治療薬でも研究を進めています。米調査会社のBCCリサーチによれば、mRNA医薬品の世界市場は、2021年の467億ドルから2026年に1,000億ドルへ成長すると予測されています。
mRNAは生体分子であるため状態が変化しやすく、物質そのものを特許で守るのは難しくなっています。mRNA医薬品を開発しても、特許で知的財産権を囲い込むことができる対象は、mRNAの配列や合成方法、製剤化のための工夫といった周辺技術に限られています。iPS細胞やゲノム編集のように、単独組織や企業が特許を独占することは難しくなっています。

(2022年2月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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