こども家庭庁は、2026年度中に始める卵子凍結費用の助成事業をまずは原則18~35歳の未婚女性を対象に実施すると発表しています。自治体指定の医療機関での卵子凍結を要件とし、1回あたり最大20万円を支援します。2025年度の補正予算に関連経費として10億円を計上していました。まずはモデル事業として始動させ、近く事業に参画する自治体の募集を始めます。
国の助成事業では、卵子凍結の知識を正しくもってもらうための講習会の受講や、指定医療機関での検査・診察が求められます。凍結後も10年程度は卵子の数を推測するといったAMH測定などの追跡調査に参加しなければなりません。卵子凍結は原則として自由診療のため、1回あたりの費用が数十万円に上ることがあります。また、凍結後の保管費用を含めて高額になります。
卵子凍結のメリットは、生殖適齢期からの解放と生殖の自律性です。哺乳動物として生まれた以上、肉体的に生殖年齢の終わりがあります。しかし、卵子を凍結しておくことで、自分の妊娠したい時期を選ぶことができる可能性を担保できます。東京都や大阪府などでは、すでに独自の助成事業を始めています。
デメリットの1番目は、卵子凍結をする人の多くが20代などの早い時期ではなく、妊娠年齢ギリギリになってから凍結する人が多いということです。例えば東京都においては、35歳以上で凍結する人が7割程度という調査結果があります。年齢が上がると、卵子の質はどうしても落ちてしまいます。卵子1個から妊娠できる割合は、平均すると4.5~12%ですから、10個凍結しても1個妊娠できるかどうかで、質が落ちれば可能性はさらに下がります。
デメリットの2番目は、卵子凍結には最初に凍結する時のコストに加えて、活用のタイミングが来るまで凍結保存を続けるための費用が必要となります。年数によっては、その保管のためのコストの負担が大きくなり、活用を待たずに保管をやめなければならないケースも出てきます。
目指すべきは、妊娠とキャリアとのトレードオフを迫られるという状況に女性を置かないために環境を整えていくことです。その手段の一つとして、メリット、デメリットの双方を正しく知ったうえで、卵子凍結費用を企業が支援することは、女性に働き続けてもらう方法のひとつだと思います。海外のデータでは、凍結した卵子を使用する女性は1割に満たないとされています。国の予算として、卵子凍結の支援のための関連事業として10億円もの税金を投入することは疑問視せざるを得ません。
海外では、20年ほど前から、20~30代の活躍する時期に妊娠・出産・子育てで職場を離れなくてもいいように、企業が卵子凍結費用を補助するようになりました。企業が社員に対して「あなたのことを考えて支援する」というメッセージとして補助金を出すというのは良い取り組みだと思っています。しかし、事情は様々ですが、凍結した卵子の9割は使用されないという実態や、メリットとデメリットがあることも、企業には知っておく必要があります。

(吉村 やすのり)





