医療機関における人材紹介料の増加

 医療機関や介護施設が有料での職業紹介に支払う手数料が増えています。2024年度は1,139億円と10年前から2.4倍に膨らんでいます。厚生労働省の職業紹介事業報告書の集計結果によれば、医師の紹介にかかった手数料は約283億円、看護師・准看護師は約598億円、施設・訪問介護職は約257億円でした。3職種の合計は約1,139億円と、2年連続で1,000億円を超えています。

 紹介手数料が膨らんでいる背景には、深刻な人手不足があります。職業別の有効求人倍率は、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師が2.04倍、保健師・助産師・看護師が2.21倍、介護サービス職業従事者が3.78倍で、いずれも全体の1.13倍を大きく上回っています。業界ならではの特徴もあります。病院や介護施設が収入源となる報酬を得るためには、必要な職員数を定めた配置基準を満たさなければなりません。

 働き方改革の影響もあります。2024年4月から医師の残業時間に上限が設けられました。厚生労働省の調査によれば、大学病院などから派遣される医師の数が減った医療機関は全体の5%に上っています。日本は欧米並みに人口当たりの医師がいるものの、入院用ベッドが多く、施設ごとの人手が手薄になりやすくなっています。

 採用では無料のハローワークを活用する方法もありますが、民間サービスの方が短時間での成果につながりやすくなっています。目先の人材確保に追われて民間サービスを利用した結果、雇用のミスマッチも起きやすくなります。医療機関や介護施設が支払う紹介手数料の原資は、国民が支払う保険料や税金です。国民負担の一部が膨らむ手数料に消えているとも言えます。

(2026年4月22日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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