医師のゆるキャリ志向

 国は、この20年近く地方の医療を守る目的で医師を増やしています。国内の医師数は2024年末時点で34万7,772人と過去最多を更新しています。このうち6割は様々な診療科をもち、多くの入院患者を受け入れる病院や大学病院で働いていますが、増加はしていません。一方、1割強を占める診療所勤務医は、2022年に比べると13%増と伸びが加速しています。医師の間で、夜間や休日の勤務を望まないゆるキャリ志向がじわりと広がっています。病院で働く医師は仕事のハードさから増えにくく、働き方の自由度が比較的高い診療所の勤務医は、2008年から24年にかけて1.6倍に伸びています。

 病院で働けば、夜間や休日に当直勤務を求められことが多く、救急患者の受け入れや入院患者の急変時に駆けつけられるよう自宅などで待機するオンコールとして呼ばれる勤務もあります。外来が中心の診療所は、夜間や休日の勤務はありません。週5日勤務は当たり前でなくなりつつあり、週4日以下が週5日以下を上回るようになっています。週に3~4日勤務する医師は、残りの1、2日にアルバイトを入れて稼いでいます。週3~4日勤務でプライベートの時間を充実させる人もいます。

 最近増えるのが、医療法人などが開設する診療所の院長として働く形態です。医療法人などの法人は複数の医療機関を開設でき、数十カ所の診療所を運営する法人もあります。僻地などを除いて院長は兼務が認められず、施設ごとに置く必要があり、雇われ院長が必要になります。年収は1,800万~2,000万円程度に達します。従来、病院を離れる医師は診療所を開業していました。新型コロナウイルス感染症の流行で、外来患者の急減を目の当たりにし、開業のリスクが意識されるようになっています。

 高齢化で病院が主に担う入院医療の需要は増えると思われます。85歳以上の高齢者の救急搬送が、2020年から2040年にかけて75%増えるとの推計もあります。病院勤務医が減少する傾向が続く中、難しい手術や救命救急、地方の医療などを担う病院で人手不足に拍車がかかる可能性があります。外来中心で時間外や休日の勤務が少ない診療所勤務医が、入院患者を受け持つ病院勤務医より高い収入を得られるのは、報酬体系としてバランスを欠いています。

(2026年4月14日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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