羊膜を使用した膝関節症治療

 東海大学などは母親の子宮内で赤ちゃんを包む羊膜に含まれる細胞を使って膝関節症の臨床研究を始めました。変形性膝関節症は高齢者に多く、国内では自覚症状を有する患者は約1000万人、潜在的な患者は約3000万人にものぼると推定されています。症状が重くなると人工関節の移植手術が必要になります。

 治療では、自分の体の軟骨を移植する治療法もありますが、軟骨の採取や、培養、移植手術など複数の工程が必要で、医療費も高額となります。健康な第三者の細胞からiPS細胞などの多能性幹細胞を作製し、軟骨などに分化・誘導する手法もありますが、拒絶反応が生じて症状が悪化する可能性があります。

 東海大学らの研究班は、母親の子宮内で赤ちゃんを包む膜の一つである羊膜に着目しています。羊膜に含まれる間葉系幹細胞(MSC)は、異物を排除するために働く免疫反応を抑える性質を持っています。様々な細胞に変化して体の組織を修復する材料にもなります。計画では羊膜から採取して増やしたMSCを変形性膝関節症の患者12人に注射し、半年間安全性などを確認します。

 羊膜は胎盤や臍帯、羊水と同じく、通常は赤ちゃんが生まれた後に廃棄されます。羊膜からMSCを安定的に採取し、培養・管理できる環境を整えれば、多くの患者に供給できる点もメリットです。しかし、羊膜を提供する母親の年齢や採取した細胞を培養する条件によって、治療効果が変化する可能性があるため、治療効果を検証する必要があります。

(2026年6月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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