肥満薬の世界市場の拡大

 肥満は、高血圧や心筋梗塞、腎臓病など様々な病気のリスクにつながり、健康寿命だけでなく医療財政にも悪影響を当てます。WHOによれば、肥満は世界で10億人に達し、その抑制が国際的な課題となっています。

 体内の腸で分泌されるホルモンであるGLP-1に似た働きをするGLP-1受容体作動薬は、膵臓に作用して血糖値を下げるインスリンの分泌を促す働きがあります。糖尿病の治療薬として実用化されました。さらに脳の満腹中枢に作用して食欲を抑えることが分かったため、体重が10%以上減る効果などが示され、肥満症の治療薬として認められました。

 デンマークのノボノルディスク社は、2021年に肥満症薬としてウゴービを、米国のイーライ・リリーは2023年にゼップバウンドを発売しました。日本でもそれぞれ製造販売の承認を得て発売されています。両社とも世界で年100億ドル以上売れており、さらに伸びています。

 薬は医師の処方のもとで使用することができます。日本では、高血圧や脂質異常症、2型糖尿病のいずれかの病気があることに加えて、①BMI(体格指数)が27以上で肥満に関する健康障害が2つある、または②BMIが35以上という適用条件があります。安全性を確保するため、処方は厳しく制限されています。

 日本では糖尿病薬として承認されたGLP-1薬を自由診療などで入手し、ダイエットや美容の目的で使う例が増えて社会問題になっています。そうした使用は安全性などが確認されておらず、下痢や便秘の他、急性膵臓炎など副作用が起きる危険性があります。国際的に問題で、WHOの専門委員会は7月に適切な使用を求める声明を出しています。

(2026年9月15日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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