大阪大学発スタートアップのクオリプスが開発したiPS細胞から作った心筋シートであるリハートが、保険適用されました。心臓病向けでは世界初のiPS細胞製品です。心臓に血液を送る血管のつまりなどで、心臓の筋肉に十分な酸素が届かなくなる虚血性心疾患による心不全などの治療目的で、薬物治療や手術などの標準治療でも効果が得られなかった重症患者対象です。
治療1回当たりの薬価は5320万円で、高額療養費制度を適用すれば年収約370万~770万円の場合、自己負担の上限額は年間53万円程度になります。9月下旬の初投与を予定し、年度内に10人への投与を目指します。
心臓病治療のニーズは大きく、複数のスタートアップがiPS細胞を使った心臓の再生医療に取り組んでいます。慶應義塾大学発のスタートアップのハートシードは、iPS細胞を使った重症心不全の治療法を開発しています。京都大学発スタートアップのiHeart Japanは、拡張型心筋症の治療法開発を目指しています。
世界の再生医療市場は2025年の326億ドル(約5兆円)から、2031年には919億ドルに増加します。リハートもパーキンソン病の治療薬のアムシェプリも、薬価はそれぞれ5000万円を超えました。今後も高額な再生医療製品は増える可能性があります。患者数が拡大すれば医療費を圧迫しかねません。条件・期限付きでの製造販売承認は、いわば仮免にあたります。重症心不全向けの再生医療製品として、筋肉の細胞を使うテルモのハートシートが2015年に条件・期限付きで承認されましたが、有効性を示せずに2024年に販売を終えました。

(2026年9月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)





