がんゲノム医療の普及-Ⅰ

がんとゲノム
ゲノムとは、遺伝子をはじめとする遺伝情報を意味します。ヒトの体をつくる一つひとつの細胞は、2万数千個の遺伝子によって、正しく働くようコントロールされています。遺伝子は、4種類の塩基から成るDNAで構成され、この塩基の配列が異なることで、性格や病気のなりやすさなどの個性が生まれます。
がんは、ゲノムの変化に伴い、遺伝子が正常に機能しなくなって起こる病気です。通常とは異なる働きを持った細胞が増えてがん細胞ができ、広がっていきます。たばこを吸う、酒を飲むといった生活習慣や、加齢などの影響で起こります。親から受け継いだ遺伝子の変化が原因となる遺伝性のがんもあり、家族性腫瘍とも呼ばれ、がん全体の5%を占めています。
がんゲノム医療とは、がんの組織などを使ってがん細胞の遺伝子を調べ、がんの原因になっている遺伝子の異常な変化が見つかった場合に、その変異に対応する薬を使って治療をすることです。個別化医療とも呼ばれます。がん細胞にみられる遺伝子変異の結果、できる物質を狙い撃ちする薬があり、分子標的薬と呼ばれます。がん細胞以外にも作用する従来の抗がん剤と比べ、総じて副作用は軽いとされています。
多くの遺伝子を一度に調べる検査では、本来知りたい情報の他に、がんになりやすい遺伝子を持っていることや、子孫に遺伝する可能性が分かることがあります。それらは患者が希望した場合だけ伝えることになっています。ゲノムを使った医療の推進と、遺伝子情報による差別が生じないようにすることなどを定めたゲノム医療法は、2023年6月に国会で成立しました。

(2024年2月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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