がん治療では、抗がん剤や放射線治療の影響で妊娠が難しくなる場合があり、あらかじめ卵子や卵巣などを採取し、凍結保存して将来の妊娠に備えることが必要となります。厚生科学研究によれば、不妊になる恐れがあるがん治療の前に、経済的な支援があれば将来の妊娠に備えて卵子の凍結保存を望む女性患者は年間約2,600人に上るとのことです。2015年にがん治療前の凍結保存が実施されたのは256件ですが、実績の10倍ほどの潜在的な希望者がいる可能性が示されました。
研究班は、患者の統計から15~39歳の未婚のがん患者は年間約5,150人と見積もりました。経済的に支障がなければ保存を希望する患者は、2,622人になると推計しています。卵子や胚、そして卵巣の凍結には、20~60万円の費用が必要となります。全ての患者の保存に必要な費用は約8億8千万円と見込まれ、研究班は公的助成制度を設けるよう提言しています。
(2017年6月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)