がん検診の不利益

がん検診は、早期発見・早期治療により死亡率を下げたり、異常なしとされた時に安心を得られたりする利益があります。しかし、不利益もあります。中でも高齢になると増えるのが偶発症です。胃がんのX線検査ではバリウムによる誤嚥や腸閉塞、腸に穴があく、検診台からの転倒などがあります。日本消化器がん検診学会の調査によれば、バリウムの誤嚥は、80歳以上では10万件あたり100件と、50代と比べて10倍以上多くみられます。腸に穴があいたケースは、10万件あたり65~69歳で0.16件、70~74歳0.26件、75~79歳0.44件と年齢が上がると多くなっています。
内視鏡検査でも、胃や食道の出血や穴があく、検査前の鎮静剤で呼吸が抑制されることがあります。大腸がん検診では、精密検査の大腸内視鏡が当たったり、内視鏡を入れる前に下剤を飲んで腸に穴があいたりするなどのリスクが、若い人と比べて高いとされています。検診の効果や不利益についての研究結果や専門家の意見を元に、推奨年齢に上限を設けている国があります。大腸がんだと英国は74歳、米国は75歳です。

(2019年1月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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