がん生殖医療によるわが国での出産例の報告

聖マリアンナ医科大学で、がん生殖医療での3例の妊娠出産例が報告されています。がん患者の女性から卵巣を取り出した後、急速に冷凍して保存し、治療が一段落したら再び移植する不妊治療で30~40代の3人が出産しました。国内ではこの手法で、若くして月経がなくなった早発卵巣不全の女性が出産した例がありましたが、がん治療を受けた患者の出産が明らかになるのは初めてです。
がん患者は抗がん剤や放射線治療によって卵巣の機能が失われ、不妊になるリスクがあります。これを防ぐため、患者の卵巣を腹腔鏡手術で摘出し、短冊状に切り分けて急速に冷凍して保存し、がんの治療が一段落した時点で、卵巣を融解して体内の元々あった場所や近くの腹膜に移植します。卵巣には卵子のもとである原始卵胞が大量にあるため、がん治療後に自然妊娠や体外受精などにより妊娠することができます。海外では10年程前から実施され、200例以上の報告がされています。
卵巣凍結は、生殖機能を温存する手法の有効性や、実施した事例の情報を集める厚生労働省の研究促進事業として進められています。このがん生殖医療分野の臨床は海外と比べて遅れていますが、がん患者の治療後の妊孕性温存は、子どものがん患者にとっても大きな福音となります。

(2022年11月20日 中日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。