がん生殖医療の公的支援

 がん治療と生殖医療の進歩により、妊孕性温存できるクライエントが増加してきています。がんと向き合い、妊娠・出産し、子育てをしたいと思うクライエントをいかに支援できるかが、今後われわれに科せられた重要な課題です。
 現在、わが国における妊孕性温存療法はすべて自費診療であり、一般的な不妊治療で受けられる特定不妊治療費助成事業による助成は適用されません。そのためクライエントは、未受精卵子や卵巣組織を採取する際の手術費用、凍結保存にかかる費用、さらに移植時の手術費用を賄わなければならないことになります。現在、妊孕性温存のための医療行為に要する費用の一部を助成している地方自治体も出てきていますが、若年女性がん患者が、一連の医療行為を受けるための本人や家族の経済的負担は大きく、実施を躊躇するクライエントも少なくありません。
 日本がん・生殖医療学会は、厚生科学研究において、卵子や胚ならびに卵巣の凍結に対する公的助成の試算をしています。それによれば、3つの妊孕性温存の対象となる患者数は約2,600人です。年間の費用は総計約8.8億円が見込まれます。不妊症カップルに対する特定不妊治療費助成のみならず、若いがん患者の妊孕性温存のための医療費に対しての助成も、今後大切になってくると思われます。

(吉村 やすのり)

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