きれいすぎる海では漁獲量が減る

窒素とリンは、海の生物を底辺で支える植物プランクトンの栄養になり、栄養塩と呼ばれます。自然界に存在しますが、家庭や工場からの排水に多く含まれています。高度成長期に瀬戸内海では、富栄養化によるプランクトンの大量発生で赤潮が頻発し、瀕死の海とまで言われました。1973年に瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定され、下水道整備などに力を注いだ結果、今度は減り過ぎて餌不足を招いてしまいました。
緑色がかっていた海がどんどん透き通って、以前は見えなかった海の底まで見えるようになりました。それとともに漁獲量は減り、魚は小型化しています。海がきれいになって魚が減るという一見反する二つの現象の背景に、かつて水質汚濁の原因とされた窒素とリンが逆に不足している実態があることが、明らかになってきています。兵庫県域での総漁獲量は、1990年代半ばまでの30年間、7万トン前後で推移してきましたが、その後は急減して、近年は4万トン前後にとどまっています。中でも春の風物詩であるくぎ煮に使われるイカナゴは、2017年以降深刻な不漁に喘いでいます。

(2019年12月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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