ロボット王国日本の行く末

産業用ロボットは、日本の自動車産業と電機産業の発展と軌を一にして市場を拡大してきました。ともに生産技術者を多く抱え、自動化ニーズをくみ取ってロボットも成長してきました。今も自動車と電機が産業用ロボットの2大需要先ですが、需要地は中国へと大きくシフトしています。それでも日本メーカーが世界の産業用ロボットの6割弱を占めています。日本は不動のロボット王国です。
工場のデジタル化・巨大化が進む世界の潮流と、多品種少量生産の中小工場が多い国内の需要はかみ合わないところがあります。安く高性能のロボットを開発できればいいのですが、国内市場はさほど成長を期待できません。何もないところにいきなり最新鋭設備を入れる中国と、古い設備も残る日本とでは前提も大きく異なってきています。世界の潮流が向かう先は、生産プロセスをほぼ自動化した巨大なスマートファクトリーです。しかし日本では、とくに食品や物流など人手で複雑な作業をこなす分野ほど、設計・管理できる生産技術の専門家が少ないのが現状です。しかし、需要側が発想を転換すれば、もっと安いロボットが早く実用化され、技術のさらなる進歩も始まります。

(2019年12月16日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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