こども家庭庁発足に憶う

こども家庭庁が、明日4月1日に発足します。政府の子ども政策を束ねる司令塔の役割を担うことになります。妊娠期からの子育て支援、虐待や貧困といった困難に直面する子どもや若者への支援、さらに少子化対策にも取り組みます。しかし、組織の統合だけでは実現するのは難しく、実効性を高める運営と十分な財源確保が課題となります。
こども家庭庁は、基本的に厚生労働省や内閣府の部局を分離・統合してできます。担当の大臣を置き、事務方トップの長官以下400人の規模で、内閣府の外局になります。組織は3部局からなります。一つは、全ての子どもの育ちを支援する成育局です。もう一つは、困難を抱える子ども・若者を受けもつ支援局です。最後は全体の調整をする長官官房で、ここで少子化対策も取り仕切ります。
子どもをめぐる問題は多岐にわたり、複雑に絡み合い、縦割り行政を打破し、一元的に対応できるかがこども家庭庁に問われます。縦割り行政の根深さは、長く議論されてきた幼稚園と保育所の一元化が見送られ、こども家庭庁の設置後も、結局文部科学省が幼稚園や義務教育を担うことになった経緯からも浮き彫りになっています。
対応の遅れの要因の一つが、子どもにあてる予算の少なさだと指摘されています。現時点で安定した財源のあてはなく、2014年から消費税の使い道を少子化対策にも広げたという前例はありますが、今回は増税論は封印され、財源の議論は後回しにされています。仮に国債発行で賄うと、これから生まれてくる子ども達にツケを負わせるとい矛盾が生まれます。
こども家庭庁には、子どもや若者を一人の個人として尊重する価値観を社会に浸透させられるかどうかが問われます。

(2023年3月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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