わが国における新薬のドラッグラグ

医薬産業政策研究所によれば、2010年以降に売り出された欧米の抗がん剤のうち、2020年末時点で52品目が日本で承認されていません。胃や腸の希少がん患者に投与されるリプレチニブなど14品目は治験情報がありません。開発元は、欧米スタートアップが半数以上で、資金力が十分ではないため、ドラッグラグどころか、いつまでも日本に入ってこない可能性もあります。このままでは希少がんだけでなく、がん全般でドラッグラグが深刻になる可能性があります。薬価の下げ圧力が強まる日本市場は後回しにされるからです。
日本市場を後回しにするのは、がん創薬のスタートアップだけではありません。2020年まで5年間の欧米の新薬全体でみると、72%が日本で未承認です。この割合は、2016年の56%を底にしてはっきり上昇に転じています。
わが国においては、予想以上に売れて利益が膨らんだ大型薬の薬価を下げる仕組みがあります。2016年から日本での年間売上高1,500億円超などの条件を満たすと、薬価が最大50%下げられる特例があります。この薬価ルールは、製薬ビジネスの日本離れを招いています。価値のある薬ほど薬価が下がるのは大問題との指摘があります。

(2022年3月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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