アベノミクスから10年

アベノミクスを掲げた第2次安倍政権の発足から10年が過ぎました。大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3本の矢で経済再生を目指しました。発足時の日経平均株価は1万230円でしたが、2万6,000円台に、企業は好業績を享受していますが、賃金の伸びは鈍いままで生産性も上がらず、低成長から抜け出せていません。
日経平均株価は2.5倍以上に上昇し、超円高に悩まされた為替も下落し、有効求人倍率も回復しています。しかし、企業は利益が増えても、国内への投資は抑制的なままです。人口減少と少子高齢化で、成長余地が限られている国内より、視線の先は海外市場に向かっています。
より深刻なのは、人への投資の伸び悩みです。人件費は2012年度の197兆円から、2021年度は207兆円とほぼ横ばいのままです。企業が人件費を抑えた結果、安い日本と呼ばれる現象が起きました。OECD加盟国の平均賃金が2012年から2021年に約1割伸びたのに対し、日本は3%にとどまっています。賃金も投資も伸び悩んだ結果、日本のGDPの伸びは、年平均で0.6%にとどまっています。この間、米国は2.1%、中国は6.7%伸びています。規模では3位を維持していますが、4位のドイツに迫られています。
2021年の1人あたりの労働生産性は8万1,510ドルと、OECD38カ国中29位と1970年以降で最も低い順位になっています。労働生産性の低迷は、企業の人材投資の低さに起因しています。1990年代のバブル崩壊や金融危機以降に企業が非正社員を増やし、研修など人的投資を減らしたことが、デジタル化の遅れや経済成長の停滞につながっています。

 

(2023年1月20日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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