アルコール依存症の早期発見

厚生労働省によれば、2017年度にアルコール依存症で病院を受診した外来患者数は約10万人、入院者は約2万8,000人に達しています。しかし、医療機関を受診しないだけで、疑いがある人はさらに多いと見込まれています。アルコールは、脳に心地良さを与える神経回路に作用し、習慣的な飲酒が続くと以前の量では足りなくなり、徐々に酒量が増えても気づかず、アルコール依存症が進行しやすくなっています。
1日あたりの適正な飲酒量の目安は、純アルコールで1日平均20gほどです。ビールなら500ml、日本酒なら1合、ワインは2杯が目安です。3倍の1日60g以上を摂ると多量飲酒となり、依存症のリスクが高まると指摘されています。アルコール依存症は、お酒の飲む量やタイミングなどをコントロールできなくなった状態のことを言います。
アルコール依存症では、飲酒で深刻な問題が出る前の予兆に注意することが大切です。治療の選択肢も増えています。以前の治療はほぼ入院・断酒だけでしたが、軽症であれば、シニア層などにも治療を受けやすくするために、目標を決めて酒量を減らしていく減酒の取り組みも広がっています。定期的に休肝日をつくったり、1日の飲酒量を減らしたりする手法も取り入れられています。回復には、相談場所、知識を得る場所、支え合う仲間と3つの要素が不可欠です。
常にアルコールが体に入っているような状態をつくると、依存症に陥りやすいとされています。日頃から自分の飲酒の習慣も注意深く見ていくことが大切です。飲んだお酒の量を把握・記録することも効果的です。本人も周囲の人でも、飲酒のトラブルを感じていれば、悩みを抱え込まず専門家に相談することが肝要です。

(2022年2月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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