ウイルスによるがん治療

厚生労働省の専門部会において、ウイルスを使ってがん細胞を破壊する治療薬の製造販売が承認されます。臨床試験では、標準治療と比べて1年後の生存率が6倍になるなどの延命効果が示されています。対象となる病気は、脳腫瘍の悪性神経膠腫で、脳内の細胞ががん化することで起きます。中でも代表的な膠芽腫は、国内に2,500人程度の患者がいると推計されています。手足のけいれんなど神経障害が生じ、脳腫瘍の中でも進行が早いとされています。
脳の腫瘍内に、特殊なウイルスを一定間隔で最大6回注入します。ヘルペスウイルスの三つの遺伝子を改変し、体内に注入したときにウイルスががん細胞内のみで増殖し、がん細胞を攻撃するように設計されています。正常な細胞ではウイルスは増えません。
治験では、手術や抗がん剤などの標準治療後に効果が十分でなかったり、再発したりした膠芽腫の患者が対象になりました。13人の中間解析結果では、1年後の生存率が92.3%で、単純比較はできませんが一般的な標準治療後の生存率15%よりも大幅に高率でした。19人でみた生存期間の中央値は約20カ月でした。
ウイルスをがん細胞の中で増やしてがん細胞を壊し、次のがん細胞に感染して同じことを繰り返させます。さらに、ウイルスが壊したがん細胞のかけらを自分の免疫が認識すれば、がん細胞に対する全身の免疫が高まります。転移する割合も減る可能性があります。遺伝子組み換え技術によって、正常な細胞でのウイルスの増殖を制御できています。

(2021年5月25日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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