ゲノム編集を使用した品種改良

遺伝子を効率よく改変するゲノム編集技術を使って、品種改良した食品の実用化が進んでいます。京都大学発スタートアップは、育ちをよくしたトラフグについて、国への届け出のみで販売と流通が認められました。ゲノム編集によって、養殖しやすくする品種改良に道が開けました。

申請したトラフグは、ゲノム編集で食欲を抑える遺伝子の働きを止めています。成長が早くなり、通常2年以上かかる出荷までの期間を半分にできます。同じ餌の量で体重が約4割多く増えます。安全性に問題がないと判断され、届け出のみで販売と流通が認められました。

一般に植物と比べて、魚類は品種改良に手間がかかります。育ちやすさなど優れた性質の個体を交配してつくります。選別などが面倒で、養殖の効率向上が優先されてきました。ゲノム編集ならば食欲など変えたい性質に関わる遺伝子さえ分かれば、簡単に品種改良ができます。

インドの調査会社P&Sインテリジェンスによれば、世界の農業分野に関するゲノム編集の市場規模は、2030年に580億ドル(約6兆6,000億円)に達します。食料需要は伸びており、農林水産省の予測によれば、2050年の世界の需要は2010年の1.7倍になるとされています。ゲノム編集食品の普及には、遺伝子組換えや他の育種技術との違いを説明し、理解を得ることが大切です。社会の理解が進めば、企業の取り組みが加速し、大きな需要が期待できます。

(2021年11月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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