コロナ禍での婚姻と出産

厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、2020年の婚姻数は前年比12.3%減の52万5,490件となり、戦後最少を更新しています。わが国においては、結婚しないと子どもを持たない傾向があり、婚姻の減少や先送りは少子化の加速に直接響きます。日本経済新聞社では、未婚の男女千人に結婚や子育てについて調査しています。
コロナ禍でも婚姻数が増えるには、何が必要だと思うかという問いに対し、54.4%が職業訓練の充実や正社員化の促進など、雇用を安定させるための支援と回答しています。次に多かったのは、金銭的な支援(新婚家庭への資金支援、住居補助など)の42%でした。育休や時短勤務など、男女ともに家庭と仕事が両立できる職場の制度づくりが34.9%、長時間労働の是正や休みをとりやすくするなど、働き方改革が32.8%を占め、多くの人が必要と訴えています。
結婚については、コロナ禍で結婚願望がでてきたと強まったが7.4%と、コロナ禍で結婚願望がなくなったと弱まったの5.6%を上回っています。結婚願望が出てきた理由として2人のほうが健康面で何かあったときに安心が48.6%、一方で願望がなくなった理由は、コロナの影響で収入が減り、結婚して生活していけるか経済的に不安になったが39.3%と最多です。特に男性では47.4%が経済的不安を挙げています。コロナの感染拡大という状況下でも、未婚者の4割超は結婚への意欲を持っています。
婚姻数の減少の背景には、健康不安と経済不安があります。健康不安はコロナ禍が落ち着けば減りますが、経済不安は支援などを充実させないと解消されません。雇用の不安定さを感じてキャリアを見直す若者が目立つようになってきています。転職やスキルアップを始め、結婚どころではないという人も多そうです。経済的な理由で、結婚に二の足を踏む人も多く、背景として賃金の伸び悩みや税負担、大学の学費高騰などが挙げられます。婚姻減も少子化も若者だけの問題ではなく、社会全体の問題としてとらえることが大切です。

(2021年6月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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