コロナ禍での少子化対策の課題

厚生労働省が今月発表した昨年の人口動態統計によれば、女性1人が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.36であり、政府は少子化対策に力を入れてきましたが、4年連続で低下しています。国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った調査によれば、夫婦が理想とする子どもの数は平均2.32人で、実際に持つ予定の子どもは平均2.01人です。理想の人数を持たない理由は、子育てや教育にお金がかかりすぎるが56%にも達しています。
子ども1人の大学卒業までにかかる教育費は、全て国公立でも1,000万円程度です。晩婚化が進んで第1子の平均出産年齢は30歳を超え、教育費がかさむ時と、自身の老後資金をためる時期が重なるようになっています。政府が閣議決定した少子化対策大綱は、少子化の背景に経済的な不安定さと教育費負担があると指摘しています。新婚世帯の支援拡充などに取り組むことを盛り込んでいます。
今回のコロナ禍で、各自治体は里帰り出産の自粛を呼びかけ、母親学級の中止や延期も相次ぎました。このため当面は妊娠・出産を控える動きも予想され、さらなる出生率低下が懸念されています。また、在宅勤務や外出自粛が広がり、男女が出会う機会が減少すると思われます。出生率の落ち込みは長く続くかもしれません。コロナのような予想外の事態が起きても、安心して子どもを育てられると思えなければ、出生率は上がりません。

(2020年6月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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