コロナ禍での欧米の平均寿命の短縮

新型コロナウイルスの感染拡大によって、欧米で伸び続けてきた平均寿命が第2次世界大戦以来の大幅なマイナスになる見通しです。英オックスフォード大学などのチームは、人口統計データや新型コロナの死亡率などから、欧州27カ国とチリ、米国の2015~2019年の傾向と、感染が拡大した2020年の平均寿命を比べています。
女性は、2019年より順調に伸ばしたのは、フィンランドの0.01歳とデンマークの0.07歳、ノルウェーの0.18歳だけで、残りは全て低下しています。多くの国は、2020年が2015年よりも低く、過去5年の伸びが帳消しになっています。男性は、2020年に更新できたのはデンマークの0.05歳、ノルウェーの0.18歳のみでした。
国別に見るとスペインやイタリアなどが第2次世界大戦以来最大のマイナス幅になる一方で、ノルウェーやデンマークなど北欧の一部はマイナスを逃れています。強固な医療システムや都市封鎖など政治的な初期の介入が成功したのではないかと考えられています。米国では、全29カ国で最も平均寿命が縮まっています。女性が1.65歳、男性が2.23歳も短くなりました。女性よりも男性の方がマイナス幅が大きくなる傾向にありました。新型コロナは男性の方が重症化ひやすいとされています。基礎疾患を持つ60歳未満の多さや、貧富の差による受診機会のばらつきなどが考えられます。

 

厚生労働省によれば、日本は2020年も平均寿命が伸びています。女性が87.74歳、男性が81.64歳で、過去最高でした。新型コロナで亡くなる確率は、女性が0.20%で男性が0.28%です。手洗いや消毒でインフルエンザなどによる死亡者が減ったことが、平均寿命の更新の一因と考えられます。

(2021年10月10日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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