コロナ禍における人工妊娠中絶の実態調査

令和2年度の厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)として行った「新型コロナウイルス感染症流行下の自粛の影響-予期せぬ妊娠等に関する実態調査と女性の健康に対する適切な支援提供体制構築のための研究」(研究代表者 安達知子)の成果が発表されています。
妊娠届出数の1~9月の前年同月比の平均減少率は4.9%で、5月、7月は著明に減少していました。妊娠届出数は8月より増加に転じています。一方、中絶件数は、1~9月の前年同月比で平均12.8%減少しており、8月以降中絶件数と妊娠届出数の減少率に乖離が見られています。厚生労働省より発表されている2019年度(2019年4月~2020年3月)の日本全国統計における人工妊娠中絶の総数は156,430件です。人工妊娠中絶件数は毎年減少しており、2013年からの6年間では、平均2.7%減少しています。しかし、2020年1~9月の平均中絶減少率は12.8%で、2.7%をはるかに超えています。
今回の調査において、COVID-19流行下における妊娠中絶件数は減少していましたが、これは妊娠数の減少を反映している可能性が高いと思われます。中絶選択において、COVID-19流行の影響は必ずしも大きくはないと考えられますが、妊娠・出産・子育てについての相談体制の構築や経済的支援を厚くする必要があります。また、COVID-19後も見据えて、避妊後進国である日本で、年齢や状況に合った適切な避妊行動をとれるような教育・広報・支援を行い、相談機関や医療機関へのアクセスを良くすることにより予期せぬ妊娠等を減少させることが求められます。

(2021年5月1日 日産婦医会報)
(吉村 やすのり)

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