コロナ禍における生殖医療

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本生殖医学会は4月1日付けで学会員に対して、体外受精などの生殖補助医療に関して延期が可能なものについては、患者とよく相談の上延期を考慮する旨の声明を出していました。その後、全都道府県で緊急事態宣言が解除されたことを受け、5月18日付けで生殖医療の再開を考慮する提言を出しています。一方、日本受精着床学会では、コロナ禍における生殖医療に関して、会員ならびに医療機関に対して、アンケート調査を実施しています。会員638名、学会員所属施設319の内141施設から回答を得ています。
新型コロナウイルスの感染拡大により、90.8%の施設で受診者が減少していることが明らかとなりました。通常通りの診療状況との回答が74.5%を占め、体外受精の際にも排卵・胚移植を実施している施設が82.3%にも及んでいます。妊娠中の感染リスクを説明した上で胚移植まで実施していたり、治療の延期を提案したものの患者の希望が強い場合にのみ治療を実施している施設が多くみられました。コロナ禍においても通常通りの生殖医療を実施している施設が大半を占めるにもかかわらず、受診者が減少していたことは、患者自身の考えで受診を控えていたと考えられます。

 

コロナ禍においては、高齢女性の場合には感染に十分留意して採卵をし、全胚凍結しておくことが望ましいと思われます。胚移植し妊娠した後に感染が起こる可能性についても、移植前に患者に十分説明しておく必要があります。その際に、新鮮胚移植をしなくても凍結胚であっても妊娠率に差がないことを知らせておくことも大切です。

(「不妊治療施設における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策と現状について」 日本受精着床学会)
(吉村 やすのり)

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