ダニ感染症

 ダニによる感染症が問題になっています。8月、北海道でダニにかまれてダニ媒介脳炎を発症した男性が死亡しました。ダニ媒介脳炎は、ジカウイルスなどと同じフラビウイルスが病原体となります。ウイルスはダニが噛んだ患者にとどまり、人から人へは感染しません。潜伏期間は714日で、発熱や筋肉痛、頭痛などの症状が出ます。重症化すると昏睡やマヒなどの脳炎症状が出て、死亡する場合もあります。回復しても後遺症が出やすく、致死率は13割です。
 ダニ媒介脳炎は欧州やロシアで流行しており、毎年1万人前後が発症しています。流行国では、林業に携わるなど感染リスクの高い人を対象にワクチンが接種されていますが、日本では承認されていません。有効な治療法もありません。身を守るにはマダニに噛まれないようにすることです。ダニはいったん体についた後、柔らかい場所に移動して血を吸います。首や耳が多く、胸や腹、上腕、頭、顔も噛まれます。
 脳炎以外に、マダニがうつす重症熱性血小板減少症候群(SFTS)による死亡者も相次いでいます。SFTSは、感染してから12週間後に発熱や腹痛、下痢が起こり、重症化すると意識障害や皮下出血などの出血症状を起こします。患者は西日本が中心です。有効な治療法やワクチンはありませんが、抗インフルエンザ薬による臨床研究が現在開始されています。

(2016年9月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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