ティール組織への変化

部下の労務管理や評価を管理職に集める階層構造をなくし、個人が職務内容や働き方などを決定できるフラットな組織が広がっています。このようなフラットな組織形態をティール組織と言います。フラットな組織はリーダー職の役割も異なります。個々の事業を牽引するマネージャーや、事業領域をまとめる部長などの肩書を設けている場合もありますが、トップダウン型の企業での一般的な管理職とは異なり、部下の労務管理をしたり失敗の責任を負ったりすることはありません。業務を進める際に指導的な役割を果たすことに留まっています。
ティールにおいては、組織全体の目標・方向性を従業員が理解しつつ、意思決定は状況に応じて個人が行います。固定的な役職はなく、個人の役割は流動的に変化します。トップダウン型の組織では、個人の裁量権は少なく、仕事が細分化されているのと対照的です。フラットな組織運営を行う企業では、勤続年数を問わず、業務改革を主導できる点も特徴です。
ティール組織には、自己管理が難しい社員が増えたり互いの進捗が分からなくなったりすると、組織運営が難しくなるというデメリットもあります。社員同士で定期的に話し合い、組織の目標を実現するため社員の役割や業務を確認し合うことが大切となります。大企業でもティール組織は可能です。そのためには自由と、そのよりどころとなる目的やプロセスの共有がカギとなります。
生産年齢人口の減少や急速な技術の発展などで、現代は複雑性が増し、将来予測が難しくなっています。多様な人材の視点を生かし変化に対応することが必要になります。トップダウンの構造を疑うことが一つの処方箋になるかもしれません。

(2023年4月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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