テストテロンと生活習慣病

男性ホルモンであるテストテロンは、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH:  late-onset hypogonadism)との関係で注目されていますが、福岡大学の柳瀬教授らの研究によれば、その低下はメタボリックシンドロームや糖尿病にも密接に関わっています。男性健診受診者249名を対象にした横断研究では、メタボリックシンドローム該当者では、非該当者に比べて種々の血中アンドロゲン指標が全て相対的に低値でした。興味深いことに、アンドロゲン指標の中でも血中総テストテロン4.0ng/mL未満は、メタボリックシンドロームの存在を予測する優れた指標であることを多変量解析により示されています。
テストテロンと糖尿病の関係に関しては、男性高齢者を対象とした断面研究において、糖尿病患者では健常者および非糖尿病患者に比べて血中総テストテロンが有意に低いことも報告されています。血中総テストテロンは男性のメタボリックシンドロームの将来予測にも応用できる可能性があります。血中テストテロンの低下はメタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスク因子ですが、血中テストテロン低下は前立腺がん治療の際のアンドロゲン除去療法により生じるため、治療の際の生活習慣病の発症にも留意する必要があります。

 

(Astellas Square 第14巻第2号)
(吉村 やすのり)

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