デルタ株酵素変化で死滅か

国立遺伝学研究所らの報告によれば、新型コロナウイルスの流行第五波の収束には、流行を引き起こしたデルタ株でゲノムの変異を修復する酵素が変化し、働きが落ちたことが影響した可能性があるとされています。
ウイルスのゲノムの変異には、nsp14という酵素が関与しています。ウイルスは増殖する際にゲノムを複製しますが、時々ミスが起きて変異が生じます。変異が積み重なるとやがて増殖できなくなりますが、nsp14が修復すれば防ぐことができます。
第五波では、nsp14に関わる遺伝子が変化したウイルスの割合が感染拡大とともに増え、ピークの前から収束までの間は、感染者のほぼ全てを占めていました。nsp14の遺伝子が変化したウイルスでは、ゲノムの変異が通常の10~20倍でした。人間の体内で、ウイルスに変異を起こして壊すAPOBECという酵素が、nsp14を変化させたと推測されています。東アジアやオセアニアでは、この酵素の働きが特に活発な人が多いとされています。8月下旬のピーク前には、ほとんどのウイルスが酵素の変化したタイプに置き換わっていました。デルタ株のウイルスではゲノム全体に変異が蓄積しており、修復が追いつかず死滅していったのではないかと考えられています。

(2021年10月31日 中日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。