ニッポン一億総活躍プランに憶う

 一億総活躍プランとは、同一労働同一賃金や働き方改革、介護離職、保育所不足などについて、支援策や問題解決への法的整備など具体策をまとめ、若い世代の希望出生率1.8を達成し、経済と社会保障を持続させるための政策です。プランは、広範囲な分野に広がっており、現状打開の大きな一歩になると考えられます。
 かつては経済が成長すれば、成果はおのずから広く働く人たちに行き渡り、消費が盛んになって、さらなる成長にもつながる好循環がありました。しかし、経済やビジネス・金融のグローバル化で、競争社会が世界規模に広がる一方、技術も進歩し、働き方の個別化が進展するに従って、果実分配の不均衡が起こり、低所得者や非正規労働、あるいは職に就けないといった状況が広がっています。若い世代の雇用の不安定や低賃金は未婚化の上昇につながり、少子化を増長しています。
 人口減が進む中、社会や経済の活力を維持するには、女性の力を生かすことが不可欠です。しかし、日本の職場はいまも女性にとって働きやすい環境ではありません。2015年の国勢調査の抽出速報集計によれば、女性労働力率は49.8%と、2010年より0.2ポイント上昇し、とりわけ20代後半の女性では8割を超えています。しかし、第1子出産を機に離職する女性はなお多く、30代の女性の労働力率は低率です。しかも管理的な立場に占める女性の割合は、欧米では34割に達しているのに比し、わが国では1割に過ぎません。
 硬直的な長時間労働は、多くの女性にとって就業継続の大きな壁となっています。男性の家事・育児も阻んでおり、少子化の一因ともなっています。加えて女性は非正規で働く人が多くなっています。輝いてください、活躍してくださいと合唱するだけでは、出生率が上昇するとは思えません。少子化を解決するためには、未婚で子どもを産むことも歓迎し、それを後押しするような政策も必要になります。結婚観や家族の形態にも多様性があることを認識すべきですし、尊重することが大切です。女性の活躍に関する議論とともに、チルドレンファーストへの取り組みも忘れてはなりません。

(吉村 やすのり)

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