マイナンバーカードの普及

マイナンバーカードとは、国内に住む人に1つ強制的に付けられる12桁の個人番号のことです。個人を識別し、行政事務を効率的に処理するための番号で、今のところ税金、社会保障、災害対策の3分野だけに使っています。番号は引っ越したり結婚したりしても一生変わりません。氏名、住所、生年月日、性別が記載され、顔写真も入ります。児童手当や年金、税などの手続きでカードを提示すれば、住民票や課税証明書などは不要になります。
今回のコロナ禍で注目されたのは、10万円の特別定額給付金を巡り、カードを使ってオンラインで申請すれば早くもらえるとされたためです。オンライン申請に必要な暗証番号を忘れる人や、電子証明書の有効期限が切れている人もいました。いずれも再登録は役所の窓口でしかできず、窓口はさらに混雑しました。
米国などは、個人番号を金融機関の口座と結びつけ、政府が個人の口座を把握しているので素早く給付金を振り込めます。米国ではこの社会保障番号がなければ銀行口座を開くことも、就職もできません。日本も今回の反省から1人1口座を政府に登録してマイナンバーとひも付きすることを検討しています。実現すれば給付は早くできます。しかし、わが国では番号制度への不信感もあります。戦時中の強制的な総動員体制のような国家管理を強めるためのものという印象を持たれがちです。かつては国民総背番号制と呼ばれた経緯もあり、こうした懸念を払拭する必要があります。
カードを持てば時には得をするという仕掛けも必要です。その一つが9月に始まるマイナポイントです。マイナンバーカードと連携した電子マネーやQRコードなどでキャッシュレス決済をすると、最大5千円分のポイントを政府が付けます。また2021年3月には、医療機関や薬局で健康保険証として使えるようになるのもメリットの一つです。

(2020年7月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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