リビングウィル

 リビングウィルとは、病気や事故で意識や判断能力の回復が難しくなったときに備え、どんな治療を望むかを記したり、代理人を指名したりしておくことをいいます。判断能力が保たれている間に、自分の希望を書くなどしたリビングウィルがあれば、家族らが患者の意思を巡って悩んだり、苦しんだりしなくてすみます。病院や自治体、様々な団体がそれぞれ書式を用意し、作成を手助けすることもあります。
 リビングウィルは1970年代に米国で始まった運動で、日本では1976年創設の日本尊厳死協会が尊厳死の宣言書を発行・管理しています。宣言書は①私の傷病が不治で死が迫っている時、単に死期を引き延ばす処置はお断りします②苦痛を和らげるためには十分な緩和ケアを行ってください③回復不能な遷延性意識障害に陥った時は生命維持装置を取りやめてくださいなどから成っています。リビングウィルは欧米では国民の1040%が示しているとされていますが、日本ではごくわずかです。これまで日本では、医療者が患者を少しでも延命させることを重視してきました。しかし、超高齢社会を迎え、病気や障害を抱える高齢者が急増しています。終末期を過ごす場所や医療で、本人の意思をどう尊重するかが重要になってきます。

(2017年2月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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