レコノミー時代の到来

再生を基本とした経済、REconomy(レコノミー)が広がっています。古着のネット販売で急成長している米スレッドアップが注目を浴びています。2026年に古着市場は10兆円規模に倍増し、2030年にH&MやZARA、急成長中のSHEINなどファストファッションの2倍を超えるとされています。もはや古着は新品のお古ではなく、世界的にアパレルの一ジャンルとして地位を確立しています。
原動力の一つは環境意識の高まりです。流行サイクルが早いファストファッションの巨大化は、温暖化ガスの排出増を招きます。1996~2012年生まれのZ世代は、ファッションに敏感であると同時に環境意識も高くなっています。もう一つはデザインの多様性です。ファストファッションは、大量生産・消費型ゆえにパターン化した製品が目立ちます。
かつての中古市場は、自動車や骨董品、美術品が代表的でしたが、今やファッション、家電、雑貨などあらゆる分野で活気づいています。中古品ブームと並行して広がっているのがレトロ消費です。背景には、様々な中古品流通に加え、膨大な情報量が若い世代の時間感覚を変えたことにあります。SNSなどからひっきりなしに情報が入り込みます。古い話でも新たに発見したことがニュースになります。
リサイクル、リユース、レトロなど、昨今の経済行為を英語にするとREが冠につく経済行動が多いことが分かります。環境問題やエネルギー・資源高を受けたCO2、資源とゴミの削減(リダクション)も同じです。こうした再生型経済への移行が加速する今を一言で表現するなら、RE型経済、レコノミーという言葉がしっくりきます。
モノや店だけではなく、政府が5年で1兆円を投じることを表明したリスキリングも同じ流れにあります。デジタル化などを外部人材にだけに頼るより、企業内のスキルを高めて、生産性を上げようとしています。人口減で新しい労働力が先細りする中、企業への忠誠度が高い社員の再生(リプロダクション)が競争力のカギを握っています。

(2022年11月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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