ワクチンによる免疫獲得

最近の研究によれば、国内で接種が進むmRNAワクチンを打つと、実際にウイルスに感染するより、感染を抑える抗体を効率よく作れることがわかってきています。感染すると、体内でウイルスが分解されます。分解されたウイルスは樹状細胞に取り込まれ、様々な免疫細胞にウイルスの情報が伝えられます。この情報をもとに免疫細胞の一種であるB細胞が、ウイルスを認識してくっつく多様な抗体を作り出します。
しかし、作られる全ての抗体が感染を抑える効果があるわけではありません。感染を抑える効果が高い抗体は、中和抗体と呼ばれます。ウイルスが細胞に侵入する時に使うスパイクたんぱく質を認識してくっつき、侵入をじゃまする抗体です。新型コロナ感染から回復した人では、感染を抑える効果が高い抗体を十分持つ人は6%、中程度持つ人は20%にすぎず、大部分の人は少ないとされています。
mRNAワクチンは、効率よく中和抗体を作るために開発されました。ウイルスに感染する時とは違って、スパイクたんぱく質の情報だけを免疫細胞に伝える仕組みを持っています。新型コロナの感染者と、感染せずにファイザーのワクチンを2回接種した人の血液の抗体を比べたところ、ワクチン接種者のほうが中和抗体が多くできるとされています。
ワクチン接種後の感染は、ブレークスルー感染と呼ばれ、ごくまれに起きることがあります。発症や重症化を防ぐ高い効果は確認されていますが、流行が続くうちは、マスクや手洗いなどの感染予防対策を続ける必要があります。

(2021年7月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。