雇用の流動化

転職する若者が増えています。新型コロナウイルス禍で雇用環境が厳しい中、成長性が高い分野をめざす動きが活発化しています。若い世代の動きが他の先進国に比べて低い日本の流動性を高める可能性がある。
終身雇用や年功序列といった日本型雇用は、成長力が落ちた企業に人材が滞留する事態を招きます。労働移動の乏しさは、産業構造の変化の壁になってしまいます。流動性を比較する指標としては、勤務年数が10年以上の社員の割合があります。新卒採用後、10年未満の若手や中途入社で勤続年数が短い人などを除いた割合で、終身雇用の中高年が多いほど高くなります。日本は45.8%と主要先進国で最も高い水準で、5年前に比べ2.1ポイント上がっています。大企業を中心に同じ会社に勤め続ける人が多くなっています。
ノルウェーやデンマーク、スウェーデンなどは、全体の30%前後にとどまります。生産性の低い分野から高い分野への労働移動が活発となっています。北欧では解雇規制が緩やかな一方、学び直しや再就職の支援が充実しています。欧州では、流動性の拡大が生産性向上に結びつく一方、正社員を減らし非正規雇用を増やすことにつながっているとの指摘もあります。格差の拡大を抑えながら新陳代謝が進む環境をつくれるかが、コロナ後の成長に向けた課題になります。

(2021年7月4日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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