一億総活躍プランに憶う―Ⅲ

 若者も高齢者も、女性も男性も、障害者や難病の人も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会、それが一億総活躍社会です。子育てや年齢のために働きたくとも働けない人は多くみられます。そんな眠った戦力を呼び覚まし、経済の活力を高めるのが狙いです。健康で働ける高齢者を増やすのも介護負担の軽減につながります。一億総活躍プランには高齢者雇用の促進も明記されており、65歳を超えた人を雇う企業に助成金を出すなど定年の引き上げを後押ししています。生産年齢人口(1564歳)の減少を少しでも補うとしています。
 人口減への妙手はなかなか見当たりません。しかし、人手不足という形で企業を直撃します。労働力不足を補おうと女性が働きだすと、待機児童の増加という壁にぶち当たります。40~50歳代の働き盛りも親の介護で離職を余儀なくされるケースが後を絶ちません。予算全体に占める少子化対策費の比率は欧州に比べて低いままであり、予算を高齢者から若年層に回す組み替えもできていません。働きやすい社会をつくり、働く意欲のある人を1人でも多く取り込む事こそが、人口減で縮む日本の成長力と生産性を高める早道です。

(2016年5月19日 日本経済新聞
(吉村 やすのり)

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