不登校を考える

 文部科学省の調査によれば、年間30日以上学校を休んだ不登校の小中学生は、1990年代に倍増しました。その後も高水準が続いており、2014年度は約123千人でした。特に、夏休み明けから学校に行かなくなるケースが多くなっています。長い休みが終わる前に、緊張や不安が一気に高まるためと思われます。
 子どもが学校に行きたくないと口にした時は、かなり進行した状態です。親は、子どもが不登校になる前に話を聞くべきなのですが、気づかないことが多いようです。子どもは、学校へ行かなければならないことをよく理解しています。行かなきゃ、行かなきゃと思っても行くことができないのです。子どもはそうした自分の状況を自己否定して苦しんでいます。その苦しさが親を含めた周囲から理解されないと、子どもはだんだん追い詰められていきます。子どもが学校に行く、行かないは、親が決める事ではなく、子ども自身が決める事です。子どもが不登校を選んだのなら、その選択を親は尊重しなければなりません。親は子どもを肯定しているつもりでいますが、自己否定している子どもを否定しがちです。それを子どもはいち早く察知しています。不登校になるまでに、何らかの日常の生活習慣に変化があるはずです。その変化に気付いてあげることが大切なのですが、多忙な日常生活の中では難しく、問題が起こってから気付くことがほとんどです。
 子どもの不登校には何らかの理由があるはずです。その理由を学校でのいじめや友人関係など外的な要因に求めがちです。その原因を求めることよりも、不登校をありのままに受け入れることが大切です。その子どもにとって不登校という出来事は、成長のための必要なステップなのかもしれません。子どもが不登校を選択したことが、その先どのようにして生きていくかを考えるための端緒になるかもしれません。そのサポートをするのが親の役目です。子どもの教育ほど難しいものはありません。子育ては教育の大変さを学ぶ場であり、自己鍛錬の場です。子どもの不登校は、自らの子育てを改めて考えさせる機会を与えてくれているのかもしれません。

(2016年8月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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