働く女性のがん治療

国立がん研究センターの統計によれば、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、2019年で男性が65.5%、女性が51.2%と男性の方が高率です。しかし、20~50代の年齢で見ると、がん患者は女性の方が多くなっています。特に30~40代は、女性が男性の2倍以上に上っています。また厚生労働省の調査によれば、仕事を持ちながらがんで通院する人は44.8万人で、約6割を女性が占めています。60歳未満に限ると女性は男性の3倍以上になっています。
現在、女性の罹患で最も多いのは乳がんで、約9人に1人が罹るとされています。大腸がん、肺がん、胃がん、子宮がんと続きます。20~40代の若い世代では、乳がんに加え、子宮がんの一種である子宮頸がん、卵巣がんといった女性特有のがんが多くなっています。女性は男性より早めにがんに備える必要があります。がんになると治療費などがかさむだけでなく、それまでのように働けなくなって収入が減ることも多く、家計への影響が大きくなります。
厚生労働省の医療給付実態調査によるがんの医療費を見ると、乳がんは入院が約59万円で入院外が約5万9,000円、子宮がんは約64万円と約3万3,000円です。保険適用前の金額なので3割負担の現役世代なら窓口で払うのは、乳がんが約18万円と約1万8,000円、子宮がんは約19万円と約1万円になります。医療費の負担を抑える健康保険の高額療養費制度を利用できれば、入院・入院外合わせても10万円未満で収まることもあります。
しかし、治療にかかる費用は病院に払う医療費だけではありません。病院以外に支払うお金なども考慮すると、1年目は治療費として50万~100万円、さらに収入減にも備えるなら生活費3~6カ月分の預貯金を準備する必要があります。

 

(2023年5月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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