光免疫療法の開発

がん治療は従来、①患部を切除する手術②放射線③抗がん剤が主流でした。第4の治療法として、がん免疫薬オプジーボを始めとするがん免疫療法が登場しました。それでも治療できない場合があり、まずは難治性の頭頸部がんの治療で期待されるのが、5番目の光免疫療法です。難治性の乳がんや食道がん、子宮頸がんへの適用拡大を目指しています。内視鏡で体の深部にまでレーザー光を届ける技術や、がんを攻撃する免疫の働きを抑える細胞を狙い撃ちにする新たな薬剤の開発なども視野に入れています。
光免疫療法は、がん細胞に結びつく抗体を患者に投与します。抗体には、光に当たると反応する色素が付いています。体内でがんの周辺に集まったところに外から針を刺したり、内視鏡を入れたりして近赤外線のレーザー光をあてると、色素が化学反応を起こしてがん細胞を壊す仕組みです。
光免疫療法の利点は、何回実施しても他の治療法の効果を妨げないので併用に適しています。光免疫療法でがんを小さくしたうえで、手術で切除して根治を目指すといった治療の選択肢が増えます。治療の影響が全身に及ぶ免疫薬や化学療法と異なり、光免疫療法はレーザー光を当てた部位だけで作用するのも利点です。がん細胞や免疫の働きを弱める細胞を、光免疫療法で攻撃できれば治療効果を高められます。

(2021年4月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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