児童虐待―Ⅳ

強い体罰の脳への影響
 熊本大学の友田明美准教授は、アメリカ、ハーバード大学のグループと共同で体罰の子どもの脳に与える影響を検討しています。412歳までの間に親から鞭や手で叩かれるなどの激しい体罰を長期間にわたって受けたアメリカ人の男女23人の脳の画像を、体罰を受けなかった人の脳と比較しています。その結果、体罰を受けた人は、脳の前頭葉のうち感情や意欲に関わる部分が平均で19.1%、集中力や注意力に関わる部分が16.9%小さくなっていることがわかりました。脳の萎縮は体罰によるストレスで起きたと考えられるということです。この前頭葉のバランスの問題が出てきて、衝動的な行為になったり、キレやすくなったりという問題行動を起こすことは十分考えられます。
 前頭前野の一部に内側前頭皮質というとても大事な場があります。犯罪抑制力や感情、思考や集中に関わっています。ここが強いしつけによって障害されると素行障害と言いまして、非行や犯罪に走ります。そして大人になる頃に、うつ病の一種である気分障害を起こし、意欲低下などのメンタルヘルスの問題に影を落とします。体罰以外で、子どもの行いを正すしつけを考えていく時代であることを、親に伝えることが大切です。体罰の是非論というのはずっと尽きないのですが、やはりこの脳への影響を見た時には恐ろしいものがあります。

「周産期から見つめなおす児童虐待:アタッチメント障害の脳科学」
(吉村 やすのり)

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