再生医療の進歩

 近年の生命科学・医学研究の進歩は著しく、特に再生医療への期待は高いものがあります。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授が、世界に先がけ初めてマウスのiPS細胞を作ったのは2006年です。2014年には、高齢者がかかりやすい失明に至る場合もある目の難病、加齢黄斑変性の治療にiPS細胞を使う臨床研究が実現しています。その後さまざまな臨床研究が開始されていますが、その成果は未知数です。また基礎研究の成果を治療に使うためには、安全性の確認が欠かせません。臨床応用のためには、いずれにしても信頼性の高い臨床研究データの蓄積が必要になります。
 再生医療には、受精卵から作るES細胞(胚性幹細胞)も使えます。限られたタイプの細胞や組織に育つ体性幹細胞もあります。体性幹細胞はすでに臨床応用され、一定の成果を上げています。最近、ES細胞を使用した臨床研究も盛んに実施されるようになっています。iPS細胞ばかりが注目されていますが、海外においてはES細胞が重要視されるようになっています。患者の状態や病気の種類によって、複数の選択肢から最適な方法を選べる時代がくることが期待されます。

(2016年12月2日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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