出世払い奨学金制度の導入

国の奨学金は、日本学生支援機構(JASSO)が運営しています。返済不要の給付型と、将来返済が必要な貸与型に大別されます。大学、短大などの利用実績は、給付型が約32万人、貸与型が約116万人です。貸与型は卒業時に多額の借金を抱える形になります。非正規雇用が増える中、返済に苦しむ人も多くなっています。
返済できない理由としては、本人の低所得、延滞額の増加が目立ちます。返済が滞ると延滞金が加算されます。自己破産を検討したことがある人は10%にも及びます。両親が高学歴の家庭の子ほど、大学進学率が高いことが分かっています。奨学金がこの構造を少しでも変えることが期待されています。
貸与型では、大学院生(修士課程)を対象に、就職後の所得が一定水準に達するまで返済を猶予する出世払い方式を新設します。返済の負担感の軽減が目的です。学部生や大学院博士課程に対象を広げることも検討課題です。
文部科学省の検討会議は、年収300万円を超えた段階で本格的に返済を始める案で、大筋合意しました。新制度では、年収300万円に達するまで本格的な返済が猶予されるので、収入が上らず完済できない人が増える可能性があります。日本では学費の親負担、米国では本人負担=自己責任の傾向が強くなっています。出世払い奨学金は、本人負担の新たな選択肢であり、家庭の経済力による進学格差を是正する効果が期待されます。一方、米国では政府が学生ローンに苦しむ人を救済するため、一定条件で返済を免除することを決めています。

 

(2022年12月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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