出生率と女性転出超過

合計特殊出生率とは、15~49歳までの女性1人が一生の間に産む子どもの数を言います。2022年は2005年と並ぶ1.26と過去最低でした。2013~2022年の約10年で、都道府県別の出生率が0.15ポイント以上減ったのは、北海道と東北6県、新潟、茨城、栃木、埼玉、千葉、静岡、広島、沖縄です。東北を含む東日本の減少が目立っています。出生率の西高東低の傾向が強まっています。
人口の地域間移動の面から近年注目されているのは、地方からの若年女性の転出超過です。出生率の低下と若年女性の減少が重なれば、少子高齢化はさらに加速します。2023年の住民基本台帳人口移動報告によれば、北海道と東北、新潟では、15~44歳の女性の大幅な転出超過が続いています。15~19歳は大きな変化がないのに、20~24歳の転出超過が強まっています。大学や短大の卒業後にUターンで戻らない、地域外で就職するなどの傾向が強まっています。
20~24歳女性の転出超過が増えている理由としては、①仕事、②配偶者、③生活スタイル、④娯楽という四つの要因が考えられます。希望する仕事は大都市圏にあると考える女性が多く、配偶者の転勤、昔ながらの生活スタイルへの忌避感、娯楽の少なさなどもあります。四つの要因は出生率の低下にも関係しています。
若年女性が減れば、都道府県別の50歳時の男女別未婚率にも影響を与えます。東北など東日本の男性の未婚率が顕著に高い一方で、女性の未婚率は高くありません。西日本からの転出先となる大阪や福岡に比べて、東日本からの転出先となる東京の引力が強いのも一因と思われます。

(2024年4月17日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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